よくMINIオーナーのお客様から「エンジンを切った後に電動ファンが回るのは故障?」
とご質問頂くので、今回はこの症状を徹底解説していきます!
症状
・エンジン停止後に高速でファンが数分間回転する
・エアコンの効きが悪い
主に自覚できる不具合としては上記があります
特にわかりやすいのは停止後にファンが突然ファーーーーンとけたたましく回り出す症状ですね
結論
ほぼ電動ファンが故障しています。
少し難しいですが、「エンジン停止後にファンが回る」という動作自体は車の機能として存在しています。
この動作自体は不良ではありません。
これはもしもの時のオーバーヒート防止の観点から搭載されている一種の保護機能です。
しかし、日本国内での通常使用では冷却性能が足りないなんてことはほぼありえませんので、真夏に山道をぶっ飛ばしてすぐ停車した、なんて時にはもしかしたらファンが回ることがあるかも?ぐらいの感覚です。
普通に走行しているだけで毎回、停車後にファンが回るようなら異常があると思った方が良いでしょう。
原因
第一世代(R50、R52、R53)でこの症状が出る場合には電動ファンの低速側の回転ができない「ファンレジスター」の断線故障でほぼ間違いないでしょう。
第一世代ミニでは2ステージファンという非常にポピュラーな電動ファンが搭載されており、必要な冷却性能によって、よく冷える高速回転とほどほど冷える低速回転、もしくは冷却が必要ない時には止めると合計で3つの動作で冷却をコントロールできるようになっています。
その際、車は基本的に12V(ボルト)で動作していますが、高速と低速を1つのファンで実現するために高速側はそのまま12Vで動作、低速側はレジスターと呼ばれる抵抗に電気を使わせる事で(仮にですが)抵抗で6V、ファンで6Vという具合で動作させます。
そうすることで高速回転と低速回転を作り出しています。
その低速側を作り出すレジスターが断線してしまう事で低速側の電気回路が成立しなくなります。
そうなると低速回転でファンが動作不良になり、OFFと高速回転しか動作できなくなります。
故障したまま放置するとどうなるのか?
基本的に気づいた場合はすぐに修理をお勧めします
このトラブルは高速側のファンは正常なので最終的な冷却性能は足りてしまうのが厄介な所です。
その為停車後にファンが回る以外は水温計を見ていても正常ですし、普通には乗れてしまいます。
※メーター内にある純正の水温計はほとんどのメーカーで運転者が不安にならないようにわざと動きを緩慢にしています。
実際にはわずかずつでも熱くなったり冷たくなったりを繰り替えしていますが、それをリニアに表示してしまうとドライバーが不安になってしまう為、冷却水温が大きく異常がない範囲であれば針がセンターにピタッと止まるようにできています。
ただし、だからと言って放置はNGです。
電動ファン自体は既に壊れているので仮にこれ以上壊れてもどっちみち交換ですのでいいのですが、それ以外にも被害が派生するケースが多いです。
主に
- 冷却システム・・・弱オーバーヒート状態で運用される為、その他のパーツやホースに負荷がかかり、破裂などの可能性があります。
- A/Cシステム・・・電動ファンはエンジンの冷却水を冷やすだけでなくA/Cに使うガスも冷やしています。
その為エアコンシステム内も高温、高圧になってしまい、エアコンコンプレッサーが著しく摩耗してしまうことが多いです。
またコンプレッサーが破損することで更にトラブルが派生し、エアコンシステム内にスラッジ(コンプレッサ内部の削れカス)が回ってしまい構成部品をダメにしてしまったり、補器ベルトやベルトテンショナーに負荷を掛けてしまい、破損させてしまう等もあります。 - オルタネーター・・・発電を担当する補器類です。
肌感にはなってしまいますが今まで数百台と似たような修理をしていますが、オルタネーターがトラブルを起こした車両は電動ファン不良も抱えているケースが多い印象です。
弱オーバーヒート状態で運用するとその熱により劣化を早めてしまうのではないかと考えています。
修理方法
現在は基本的にOEMの電動ファン交換をオススメしております
ネットには社外のレジスター部分だけをパーツにしたリペアパーツも安価に販売しています。
この単体でのリペアも作業自体は勿論できますし、過去に経験もございます。
ただ電動ファンは車の中でスターターモーターの次に消費電力が大きいと言っていいパーツです。
車によっては50A(アンペア)60Aといったサイズのヒューズを使います。
一般の方にはアンペア数ではあまりピンっとくる数字ではないかもしれませんが、単体レジスターでのリペア時に配線を切った張ったする必要があり、その接続部に僅かな接触不良やハンダの割れ等があれば、たちまち発熱し、大きなショートや車両火災の危険性も十分に考えられます。
過去に当社で修理し分解した際に、他店様でリペアレジスターを組み付けられており配線間の抵抗で熱を持ち配線の被覆が溶けてしまっている車両もありました
そもそもレジスター自体抵抗なので大変な熱を持つのですが、それを知ってか知らずか、樹脂部にダイレクトに取り付けてしまい、張り付けた先の樹脂が溶けてしまっていたり・・・
ちょっと遅ければ結構危なかったんじゃない??というような車に何度も出くわしたことがあります
そういったリスクを加味しながらも車という性格上、その安心を短くても数年単位で高負荷運転時から真冬の氷点下まで担保することを考えるとどうしても単品リペアはリスクがあるように思っています。
その為当店ではOEMの電動ファン交換をお勧めしております。
発生車種
第一世代全車
R50 ワン・クーパー
R52 コンバーチブル
R53 クーパーS
スーパーチャージャー有無(非クーパーSかクーパーSか)に関わらず発生します・・・
交換
交換にはフロントバンパーを取り外し、リンフォースメントを取り外し、ラジエター裏(エンジン側)の電動ファンを交換します
慣れていれば簡単に感じる内容ですが、配線の取り回し等知らないと思いの他時間がかかるかもしれません
より詳しいオーバーヒートの仕組み
最後にこのトラブルが発生した時に実際にどうなっているのかを詳しくご紹介します
冷間時にエンジンを始動します
徐々に冷却水温が温まってきます
もちろん暖気時は早くエンジンを温めたいので電動ファンはOFFの状態です
やがて暖気も終わりましたが、このままですとエンジンの方が圧倒的に熱いので何れ冷却水温もそれに引っ張られオーバーヒートします
そこである一定の温度に達したら低速側の電動ファンを回します
ラジエターに強制的に風を当てるので一気に冷却水温が下がります
やがて設定値まで水温が下がるとそれ以上には冷やしたくないので電動ファンを止めます
ファンを止めるのでやがて先ほど同様徐々に熱くなっていきます
そうしたらまた低速を回転させ・・・・とこれを永遠に繰り返していきます
イレギュラーとして、高負荷の運転をして冷却水温が著しく上昇、低速回転でファンを回しても冷却水温が下がらない。というような状況になった場合は、高速側に切り替え思いっきりファンを回転させ冷却性能を担保します
その結果冷却水温が下がれば低速回転同様、次第に低速に切り替え、やがてOFFにし常に安定した状態に向けてコントロールします
これがレジスターが不良の場合
冷間時スタート→暖気完了、低速回転開始!とエンジンのコンピューターは判断していますが、当然回りませんので冷却水温はどんどん上昇します
やがてオーバーヒートギリギリだよ!というラインまで冷却水温が上がった段階で高速側が回り始めます
高速側は正常ですので一気に冷却水温が下がります
「よしよし温度が下がってきた!そろそろ低速回転に切り替えるか」とコンピューターは考えますが、勿論低速回転では回りませんのでまたオーバーヒートギリギリまで冷却水温が上がります
また高速側が回転して・・・・とこれを無限に繰り返してしまいます
またこの状態でエンジンを切るので、エンジンコンピューターは「あれ?水温高すぎるね!!危ないからファン回すね!」とエンジン保護の為緊急的にエンジン停止後にファンを回します
これが低速側が回らないファントラブルと冷却水温の関係性です
過去の実績一覧
詳しくは弊社YouTubeちゃんねるでも紹介しています
是非ご覧ください!
小林裕太(こばやし・ゆうた)
国家一級自動車整備士
小林モータース株式会社 工場長
欧州車を中心に扱う某輸入車専門店で工場長等を計8年半務める。
豊富な輸入車整備経験によりBenz、BMW、Audiからポルシェ、ベントレー、フェラーリまでヨーロッパ車全般を得意とする。
【店舗情報】
千葉県松戸市の修理工場なら 小林モータース
国産車・外車、メーカー問わず修理可能です
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